研究概要 |
わが国の精神障害者の社会復帰は、1999年5月の精神保健福祉法改正によってその意識が徐々に高まりつつあり、精神科看護者は、長期在院患者を社会復帰に導くためにSSTを始めとした各種プログラムを用いて様々な努力をしている。しかし、このような特殊なプログラム以外に看護者の日々の患者との関わりは、患者の社会復帰にどのような影響を及ぼしているのであろうか。平成11年度の研究では、患者の側面から退院を妨げる要因を抽出したが、今回は、看護者の患者への感情や見方(患者観)並びに看護行為の特徴を明らかにし、どのような要因が関連しているかを調査した。目標:長期在院中の精神分裂病患者の退院を妨げる要因を、精神科看護者の日常の関わりから明らかにする。対象:関東南部の単科もしくは、老人病棟を併設した精神病院5ヶ所(平均病床数278床SD=146,平均在院日数1416日SD=1232)の療養型病棟に勤務し、調査への参加に同意のあった看護者27名(平均年齢46歳,精神科勤務平均年数13年SD=9,男性8名:女性19名,正看13名:准看14名)であった。方法:データ収集期間2000年9月12日〜10月4日。データ収集は、面接法を用い、半構成的質問を行った。面接時間は60分以内とし許可の得られた場合には、テープ録音を行った。分析は、Grounded Theory法を用いた。結果:長期在院患者への看護には4種類のパターンが抽出された。(1)患者を「自分と同じ人間」としてみた看護で、社会復帰を念頭においた関わりをしていた(3名)。(2)看護者は、患者を「蔑み,見落とし,同情,自分に脅威を与える」対象としてみており、専門知識の不足、職場の人間関係や家族の否定社会復帰施設の貧弱さからの「後ろ盾」の乏しさが影響していた。「遣り甲斐のなさ」から社会復帰の重要性はわかっていてもそれに向かう活力を消耗していた(13名)。(3)患者を「憐憫,同情」の対象とし、さらに自分自身の劣等感が影響していた。患者に「何とかしてあげたい」と強く思っているが、行動になかなか結びつかない(5名)。(4)社会復帰はさほど念頭においてはいないが、日々の生活の援助を重視しており、患者の行動を改善させ日々楽しませる関わりが多かった(6名)。このように、患者観の他に看護者の専門知識の程度、職場の人間関係、後ろ盾の程度、劣等感等の要因が抽出された。
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