研究概要 |
臨床の現場で味覚障害を回復するために,高頻度に利用されているレモン含嗽について,科学的根拠を明らかにするために健康女子学生20名を対象として基礎実験を施行した.第一実験として,唾液分泌量,快適感,味覚閾値を指標として含嗽レモン濃度について検討した.全テフロン製フィルター式簡易採唾器を用いて耳下腺からの唾液分泌量,4味質液(甘味・塩味・酸味・苦味)テーストディスク,主観的評価を用い,蒸留水をコントロール群として5%・10%・15%のレモン濃度で比較した.その結果,唾液分泌量はコントロール群と比較すると各濃度とも有意に多くなっており,レモン濃度が上昇するほど増加した.しかし10%と15%の間では有意差が認められず10%レモン含嗽が唾液分泌を促進させ,一部の味覚閾値を敏感にすることが証明された.しかしながら主観的評価の快適感は5%レモン水が良く,10%では苦痛が強いという問題を残した. 第二実験として,10%レモン水含嗽の快適感を高めるために,炭酸水(市販のサイダー)を加え,5%レモン水,10%レモン水,10%レモン炭酸水について同指標により比較した.その結果,唾液分泌量は炭酸を加えることによりさらに分泌量が増加し,快適感は炭酸水が口腔内にさっぱり感を与え,総合的に判断し10%レモン炭酸水がよいとの結論を得た. この成果をもとにがん化学療法を受けている味覚障害患者に対する10%レモン炭酸水含嗽の効果を検討するために,悪性リンパ腫患者に対する10%レモン炭酸水含嗽の効果に関する研究計画書を作成した.計画書では,調査スケジュールと内容,口腔内の合併症を予防するための歯磨き指導,Oralクライオtherapy,患者説明文と説明資料について明記した.
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