研究概要 |
精神障害者の家族のケア提供上の困難と対処に関する無記名自記式の質問紙を開発し,その信頼性と妥当性を検討した. 対象は首都圏近郊に在住する精神障害者の家族ケア提供者287名で,161家族から回答を得た(回収率56.1%).そのうち有効回答数は151部であった(有効回答率52.6%).また,同意の得られた回答者62名に対し,2週間後に再テストを行った.回答者の平均年齢は60(±9.2)歳であった.回答者のうち,親の占める割合は77.5%,同胞13.2%,配偶者6%,その他3.3%であった.患者との同居率は80.8%,家族会所属率64.2%,年金を収入源とする家族が46.4%であった.患者の平均年齢は38(±13.1)歳,平均罹病期間15.1(±10.4)年,平均入院回数2.4(±2.7)回,平均総入院期間3.9年(±7.6年)であった.患者のうち男性の占める割合は63.6%,女性36.4%であった. 質問紙の開発は,前年度の結果及び先行研究で使用された尺度を参考に行った.その後,精神障害者の家族10名に対し質問紙への回答を依頼し,答えにくい項目や不適切な項目に関して意見を求め,項目を修正,削除,追加した. 尺度の信頼性の検討にはα係数と再テスト法による相関係数を算出し,内的構造の確認には因子分析を行った.また,尺度全体の得点と相関の弱い項目(r≦0.4)及び重複した項目は削除した.統計解析ソフトはSPSS10.0J for Windowsを用いた.困難尺度(15項目)のα係数は0.843,初回テストと再テストの相関係数は0.822,対処尺度(34項目)のα係数は0.929,初回テストと再テスト間の相関係数は0.905であり,両尺度ともに内的整合性及び安定性があることが示された.主成分分析により,負担尺度は「つきあいのトラブル」「日常生活の制約」「将来の不安」「後悔」の4因子が,対処尺度は「本人の交流支援」「受容的接触」「家族間相互支援」「情報収集と活用」「家族内相互支援」「楽観視」「支援の動員」「自己管理」の8因子が抽出された.
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