研究概要 |
1)目的:(1)産科領域の看護職に対し,HIVと女性に関する知識と意識の実態および相互関連性を明らかにする.(2)産科業務の血液体液曝露の実態を明らかにする.(3)12年度の調査データと事例の分析により支援のための研修・教育プログラムを作成する. 2)方法・対象:新潟県内10施設の産科看護職対象の無記名自記式質間紙調査.HIV感染妊婦看護を経験した助産師,乳房ケア・母乳取り扱いの感染対策を導入した助産師に対する面接調査.助産師学生/産科看護職のための教育プログラム開発・実施,評価. 3)結果:質問紙調査の有効票188,回収率94.9%.助産師107,看護師62,准看護師15.平均年齢36±9.65.HIVを含む感染対策の研修経験者79人,助産師107人中53人.[HIV知識]-26項目3評定平均値は12年度調査の母親2.0±0.54に対し,看護師2.3±0.66,助産師2.5±0.57.とくに助産師の研修群が有意に高かった.[意識]-「HIVへの関心度」「医療への意識」「偏見差別」の24項目は母親に比べて看護職の「HIVへの関心度」は有意に高率を示したが他の2領域の差はなく,知識・研修と意識との関連は認められなかった。[妊娠時HIV抗体検査]-検査の説明内容を知らない,わからないの回答率が50%前後を占め,看護職の関わりの薄さを示した.[血液体液曝露]-針刺し切傷事故の経験率は約20%.感染症の分娩介助経験はB型肝炎91人約50%,HIV感染者の介助経験者は2人であった.曝露防止行動は研修群が有意に高率を示すものの,新生児ケア業務の対策は不備を示した.また,母乳の取り扱いは研修の有無によらず手袋装着率が低い結果であった.[HIV陽性妊婦支援]-聞き取り調査から里帰り事例の支援にあたり,地域および家族の育児文化を把握した助産師支援の重要性が示唆された.また,母乳取り扱いは他の体液の認識とは異なる特有の価値観が感染対策を阻んでおり,助産師の感染対策に焦点をあてた教育プログラムの開発と研修の必要性が示唆された. 4)まとめ 研究結果から看護戦略には意識と行動変容をもたらす教育プログラムが重要と考えられ,助産師学生および助産師対象のセミナーを実施した.残された課題は有効性評価のための尺度開発である.
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