研究概要 |
平成13年度は2つの計画があった。第一に、研究の最終目標である手術前から手術後1年までの縦断的な分析結果をまとめ26th Annual Congress Oncology Nursing Society (Oncology Nursing Society at San Diego, USA)において発表することであった。第二に、この学会発表の後、研究評価をも含め研究成果報告書を作成することであった。計画どおり遂行でき、研究成果報告書に記した主な結論は、以下のとおりである。 1.乳がん体験者のソーシャル・サポート・ネットワークは、手術前から手術後1年まで、主に家族や友人であった。 2.乳がん体験者のソーシャル・サポートのプラスとマイナス側面としてのサポートやコンフリクトの手術前から手術後1年まで各期における有意な経時的変容はみられなかった。 3.乳がん体験者の精神的状況は、手術後1ヶ月で上昇し、徐々に下降傾向となり、手術後1年では最も低い得点を示し精神的な状況が良くなるという傾向を示した。経時的な変容はその統計的な有意差を示さなかった。 4.乳がん体験者の自覚・他覚症状による身体的状況は、手術前と比べ、それぞれ手術後2週、1ヶ月、6ヶ月との間において有意差を示した。時間の経過とともに身体症状の量的減少を示した。 5.乳がん体験者の家族員数が、手術前にサポートと有意相関を示した。婚姻状況と精神的状況や身体的状況との関連の有無は、データ収集時期により有意な相関が「ある」や「ない」という結果を示した。 6.ソーシャル・サポートのプラス側面としてのサポートと身体的状況とが、手術前においてのみ有意相関を示した。また、サポートと婚姻状況が手術後1年においてのみ有意相関を示した。ソーシャル・サポートのマイナス側面としてのコンフリクトは、身体的状況と有意相関を示さず、その傾向のみを示した。この相関分析は、因果関係を示す統計分析ではない。因果関係をみるソーシャル・サポート変数と健康への影響を検討できる統計分析可能な対象者数を得て、追究する必要がある。 7.看護者は、乳がん体験者への看護実践にこれらの結果を活用し、乳がん体験者とその支援源であるソーシャル・サポート、ネットワーク構成員をケア提供の対象としたアプローチにより、精神的・身体的状況を向上すべくケア提供が必要である。 上記の研究成果をまとめ論文投稿の予定である。また、次の研究遂行にあたり研究計画書を作成中である。
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