研究概要 |
本研究は産婦が分娩中に被るストレスを計量的に評価する事を目的に行った.ストレスの一指標として,分娩中の体表温度変化を調査した. 対象:正常経膣分娩19例(初産婦10例,経産婦9例). 方法:左側の第IV指尖端内側部にφ6mmの体温プレート電極を装着し,1mの中継リード線を介してポータブル熱電対温度計(PTW-100)に接続し測定した.さらに,BIOPAC社基礎医学研究システムのバイオアンプの中からトランスジューサー(DA100B)と皮膚温度用アンプ(SKT100B)を用いて同様の測定を行った.データーを記録紙に表示させると共に内部メモリーに保存し,実験終了後にPower Mac G4にデーターを転送して解析用ソフト(MEMORIA-MAC並びにAcqknowledgeIII)を用いて分析した.分娩時期を子宮口開大が≦3cmの潜伏期,4〜8cmの加速期,≧9cm極期,分娩第2期,第3期の5つに分類し,各期における産婦の体表温度測定と共に,産婦自身が感じる陣痛の強さをvisual analog scale(VAS)に表示させ,同時に我々が考案した産痛スコア(MS)を助産婦に測定してもらった. 結果:体表温度低下は初産婦・経産婦共に極期が最大であった.MSでは初・経産婦共に分娩第2期で最大,VASでは初産婦が極期,経産婦では分娩第2期で最大であった. 以上より,正常経膣分娩においては指先皮膚温の測定,MS・VASによる評価より分娩第1期の極期にストレス度が極めて強い事が明らかになった.分娩進行中の皮膚温測定は産婦のストレス負荷状態を評価できる指標であり,さらに産婦の体温管理,分娩場所の環境管理,足浴,精神的支援等の助産ケアの必要性が示唆された.今後は難産産婦との比較も検討していきたい.
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