研究概要 |
本研究は産婦が分娩中に被るストレスを計量的に評価することを目的に行った.正常分娩群と難産分娩群に対し,産婦の体表温度skin temperature(ST)変化,産婦の主観的な陣痛の強さvisual analog scale(VAS),助産婦の測定する産痛スコアmidwife's score(MS)の三つのストレス評価方法を用いて分析した.産婦の体表温度はコンピューターシステムと連結した指尖脈波陣痛計(指尖掌側部皮膚温を組み込んだ)ポリグラフシステムを利用し,秒単位のリアルタイムでの体表温度変化を分娩監視装置の出力記録上で子宮収縮曲線に連動させて記録し,解析ソフトを用いて分析した. 正常分娩群では陣痛周期に同調してSTが0.2〜0.4℃低下を示し,初産婦・経産婦共に分娩第1期の極期が最大値であり,分娩第2期で経産婦が初産婦よりSTが低値であった.難産分娩群ではSTが0.4〜0.7℃まで低下し,その回復にも時間を要した.MSでは初産婦・経産婦共に分娩第2期で最大,VASでは初産婦が極期,経産婦では分娩第2期で最大であった.産婦におけるSTの低下がVASやMSの変化と鏡面像的な変化を示し,指尖皮膚温は産痛あるいはそれに加わるストレス状態を強く反映することが明らかになった. 皮膚温の低下により負の感情が発生した時点を助産婦が把握できれば,直ちに適切な対処や指導が実施でき,また体表温度の変化と陣痛やFriedman頸管開大曲線との関連性を総合的に判断することにより,難産予測が可能となる.精神的支援,産痛緩和法,ホリスティクアプローチ等のケア以外に,産婦ストレスの計量的評価は分娩期ケアや分娩方法の改善に応用できることが示唆された.
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