研究概要 |
呼吸器感染症-肺炎を発症しやすい慢性気道疾患患者と脳血管障害患者を対象にして,これらの患者における疾患の進展防止,呼吸器感染症の発症予防と看護のための基礎的研究を行うことが本研究の目的である。本年度は以下の研究を行った。 1.慢性気道疾患患者の感染予防と自己管理に関する調査:慢性気道疾患は,呼吸器疾患のなかでも頻度が高く,高齢者に多くみられる疾患群である。感染の併発により,病期の進展増悪がおこるが,長期にわたる療養生活の中では感染に対する認識が低下しやすく,上気道感染を繰り返すことが多い.さらに,加齢に伴う生体防御能の低下がみられる高齢の患者においては,たんや咳,呼吸困難などの呼吸器症状が常に認められ,軽い風邪症状を契機に症状が増悪,長期化しやすいため,継続実施しやすい自己管理を目標とした看護介入が必要となる。本年度は,研究目的に同意の得られた慢性気道疾患患者69名を対象に感染予防と自己管理に関する調査を行った。感染予防と呼吸機能の維持を目的とした自己管理に関する知識および実践状況を比較した.その結果,病状が進展し,在宅酸素療法を必要とするほど呼吸機能の低下した患者の方が,軽症の患者に比べ,感染予防に適切な知識を有し,実施しているということが明らかになった。しかし,どの患者においても継続実施の必要性については十分に理解されていなかった。 2.口腔ケア方法の検討:電動歯ブラシに給水吸引機能が装備されている口腔ケア器具による効果を検討した.研究目的に同意の得られた入院療養患者で,脳梗塞のために嚥下障害があり,経鼻経管栄養を受けている患者と,経口摂取可能な患者を対象に就寝前に口腔ケアを実施した.口腔内所見の変化,呼吸器感染症の発症状況,細菌学的検査およびADLへの影響から検討した.ブラシの使用により,歯牙の清掃と咽頭部から舌背部のケアを同時に行うことが可能であった.給水しながらの吸引で誤嚥の心配が減り,むせやケアに対する不安や苦痛が軽減された.さらに,歯肉の発赤や腫脹,出血が軽減し,ブドウ球菌とカンジダ数の減少がみられた.給吸ブラシの使用は,嚥下障害や運動障害があるために自分で口腔ケアのできない患者の看護ケアとして有効であると考えられた.
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