研究概要 |
呼吸器感染症-肺炎を発症しやすい慢性気道疾患患者と脳血管障害患者を対象に,これらの疾患の進展防止,呼吸器感染症の発症予防と看護のための基礎的研究を行った。すべての対象者には研究目的および内容と諾否による不利益はない旨を説明し,同意の得られた場合に限り調査対象とした。 ・慢性気道疾患患者の去痰に関連する要因の分析:慢性気道疾患患者にとって去痰は自己管理能力を維持するために特に重要であり,効果的な去痰方法を検討するために関連要因の分析を行った。呼吸器内科に通院治療中で慢性的に痰の喀出がみられる慢性気道疾患患者を対象に面接調査を行った。気道に慢性の炎症が持続する患者の去痰では,痰の性状による病態の違いを考慮した看護ケアが必要であることが示唆された。粘液性痰では慢性の気道感染は少ないが,喀出時の糸ひき性が高いため,咽頭から口腔の喀出方法を考えることの重要性である。慢性の気道感染を伴う膿性痰喀出患者では,感染を初期に抑え,二次感染を予防することが特に重要で,患者自身も痰の性状に注意した自己管理を指導する必要性が示唆された。 ・高齢の痴呆患者と肺炎発症に関する調査:主にリハビリテーションと高齢者の医療を行っている病院と老人保健施設に入院,入所中の60歳以上の患者を対象に調査を行った。高齢者の感染発症にはADLの低下が関連していると考えられた。特に痴呆を併発した患者では加齢による身体諸機能の低下に加え,含嗽,歯磨きなどの清潔行動や感染予防行動が不十分になると考えられた。活動能力の低下は,呼吸機能の低下など生体防御機能を低下させ,感染発症を助長している可能性が示唆された。ADL低下が軽度で,ケアに伴う苦痛の少ない時期からADLの維持を考えて関わることが重要で,長期的な感染予防のためには患者自身の身体機能を高めることが必要であると考えられた。
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