研究概要 |
肺炎を発症しやすい慢性気道疾患患者と脳血管障害患者を対象にして,これらの患者における疾患の進展防止,呼吸器感染症の発症予防と看護のための基礎的研究を行うことが本研究の目的である。すべての対象者には研究目的および研究の主旨について説明し同意を得た。 ・慢性気道疾患患者における去痰に関する研究:患者の自覚症状から病状の悪化や進展を判断するための簡便なアセスメントスケールを提案し,その妥当性について検討した。慢性気道疾患患者を対象に面接調査と痰の分析を行った。痰の喀出状態に関する項目では,気道感染の有無による傾向の違いが明らかで,設定した内容との該当率が高く尺度として有用であると考えられた。 ・脳血管障害患者の肺炎予防のための基礎的研究:脳血管障害患者を対象に,脳血管障害の存在,慢性気道疾患の併発と肺炎の発生の関連について調査した。肺炎の危険因子として,多発性脳梗塞,嚥下障害,慢性気道疾患等の要因が重複することが重要であると考えられた。活動能力の低下は,呼吸機能の低下などの生体防御機能を低下させ,感染発症を助長している可能性が示唆された。長期的な感染予防のためには患者自身の身体機能を高めることが必要であると考えられた。 ・口腔内環境の改善と口腔ケア方法の検討:長期入院療養患者で,脳梗塞と嚥下障害があり,経鼻経管栄養を受けている患者と,経口摂取可能な患者を対象に口腔ケア方法を検討した。口腔内所見の変化,呼吸器感染症の発症状況,細菌学的検査およびADLへの影響から検討した。給水しながら吸引することで誤嚥の心配やケアの苦痛が軽減された。歯肉の発赤や腫脹,出血の軽減,ブドウ球菌とカンジダ数の減少がみられた。脳血管障害後遺症による嘘下障害患者の感染予防と摂食機能改善のためにはブラッシングによるリハビリテーションが有用であることが明らかになった。
|