本研究は、平成12年2月から平成14年8月までに5回の縦断的調査を行った。第1回の調査は、妊娠後期と産褥早期の女性計1490名に質問紙を配付し、1150名より回収した(回収率77%)。その後、継続調査に同意の得られた参加者460名(40%)を対象に調査を行った。 第1回から5回までの各時期の対象者の背景は、初産婦が54〜56%、経産婦44〜46%であった。有職者は20〜30%、核家族は約80%であった。計画妊娠の者は約45%、計画外が約20%であった。 第1回から5回までの調査結果から以下のことが明らかになった。 1.妊娠後期と産褥早期の女性の心理社会的状態は類似したパターンを示した。特に、情緒的側面の「いらいら」は妊娠後期に多く、産褥早期では心身疲労の「疲労感」「起床時すっきりしない」が多かった。 2.出産後1ヶ月から2年後までの心理社会的状態では、夫のサポートである「育児への協力」「家事への協力」「側にいてほしい」や、ボディイメージの「容姿が気になる」「体重が気になる」が強かった。 3.妊娠後期、産褥早期の心理社会的状態はその後の状態と有意に関連があった。すなわち、妊娠期や産褥後期に心配の強い者は、その後の心配も高くなることが明らかとなった。 4.妊娠、出産後の女性の心理社会的状態には、計画妊娠の有無やセルフエスティームが関連していた。計画外の妊娠だった者、セルフエスティームの低い者は心配も強かった。 本調査結果から、女性の多様なニーズへのサポートと夫婦関係の調整の重要性が示唆された。
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