研究概要 |
呼吸曲線のフィードバックを用いた嚥下訓練のための基礎的研究として2つの実験を実施した。測定装置は、MacLab/8s、BioAmp、パーソナルコンピュータを使用して、10ml水嚥下時の舌骨上筋群表面筋電図と呼吸センサーによる呼吸曲線を同時に測定した。被験者は健康な青年期女性11人(年齢19.45±0.7歳)である。実験1は、嚥下を惹起するときの呼吸周期上のタイミングは一定に規定されているのかを明らかにすることを目的として、被験者の嚥下時の呼吸型を1ヶ月の間隔をおいて2回測定した。被験者は1回の測定において10回の水嚥下を実施した。分析は呼吸型を確定して^<1)>、単独嚥下およびeae(呼気-嚥下性無呼吸-呼気)型発現率に関する2回の測定結果間の相関を求めた。その結果、単独嚥下発現率はr=0.827、eae型発現率r=0.756であり、相関が認められた。実験2は、呼吸周期のどの時期であっても随意的に嚥下を惹起させることができるかを目的とした。被験者はコンピュータディスプレイ上の自分の呼吸曲線を見ながら、呼吸周期上の呼気終末時(A)、呼気の途中(B)、吸気終末時(C)、呼気の途中(D)のいずれか指示された時期で嚥下を惹起させて、その呼吸曲線が測定された。各時期について5回の水嚥下が実施された。その結果、ABCD各時期に期待した嚥下時の呼吸型とその発現率は、Aではae/aiが52%、Bでは1-2ieae/1-2ieai/1-2iae/1-2iaiが75%、Cでは3ieae/3ieai/3iae/3iaiが53%、Dでは3il-2eae/3il-2eae/3il-2eaiが45%であった。以上から、本実験条件条件下では、嚥下時の呼吸型は個人に規定されていた。また、呼吸曲線のフィードバックによって、随意的に嚥下をコントロールする可能性が示された。 1)鎌倉やよい他:加齢に伴う嚥下時の呼吸の変化.日本摂食・嚥下リハ学会雑誌,2(1),13-22,1988
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