本研究は、様々な治療の選択肢をもつ乳癌患者の意思決定を支えるための看護援助を検討するために以下の目的で行った:1.乳がん患者が治療法を意思決定するまでの思考、行動様式を明らかにする。2.乳癌患者が意思決定の際に得ていた情報の内容、情報源などを明らかにする。3.乳癌患者の意思決定に影響を及ぼす要因と満足度との関係を明らかにする。対象は、初めて乳癌と診断され治療法を自ら決定した女性のうち、研究参加の承諾が得られた者とした。半構成的質問紙を用いた面接調査の結果、乳癌患者の意思決定には「情報収集」行動が関係しており、情報収集を行った患者は意思決定を主体的に行い、情報を持たない患者は決定を「おまかせ」する傾向が明らかとなった。また、乳癌患者は病院の専門性や設備、ケアの卓越性、および治療の効果、副作用とその対処などの情報を、家族、医療従事者、同病者、記録物を情報源として得ていることが明らかになった。さらに患者の意思決定のプロセスには、不安の程度やソーシャルサポートの大きさが影響を及ぼしていると考えられた。以上の結果を基に、意思決定役割、疾患・治療、患者の得た情報、ソーシャルサポート、不安および意思決定に対する満足度からなる質問紙調査を実施した。その結果、患者の満足度に影響を及ぼしていた要因は、意思決定役割、術式、配偶者以外の家族からのサポート、および情報量だった。また意思決定に役立っていた情報は、治療の選択肢や利点・欠点、病気の進行度や転移、および医療機関や医師の専門性などであった。以上から、乳癌患者の意思決定を支えるためには、意思決定に役立つ情報を術前から提供すると共に、配偶者以外の家族が患者をサポートできるよう働きかけていくことが重要であると考えられた。
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