研究課題/領域番号 |
11672393
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
稲吉 光子 北里大学, 看護学部, 助教授 (60203212)
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研究分担者 |
川口 優子 神戸大学, 医学部・保健学科, 助教授 (90152941)
遠藤 恵美子 北里大学, 看護学部, 教授 (50185154)
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キーワード | がん患者の自己擁護技態 / 心理教育 / 批判的内省 / 病気体験の意味 / がんサバイバー |
研究概要 |
本年度の研究は2つの成果がある。これらの内容を以下に要約した。 1.終末期がん患者の自己擁護技能の心理教育面接の効果 がん患者の6つの自己擁護技能とは、コミュニケーション、情報収集、意思決定、問題解決、交渉、自己の権利主張である。技能にあわせた6回の心理教育面接が実施され、教授-学習法として批判的内省法が用いられた。それは3段階から組み立てられ、記述期、内省期、解放期として弁証法的に展開された。 研究参加者Aさんは64歳の男性で、左腎臓癌(stage IV)と診断され、腰椎と肝臓への転移があった。Aさんには「左の腎臓の癌で、始めに化学療法をして、効果があれば、手術が可能となるかもしれない」と説明されていた。研究者による心理教育面接は確定診断の4週間後から行われた。第2回の面接(記述期)で、Aさんは[手術ができない」と医師からすでに説明されており、そのために生じた絶望という強烈な感情を繰り返し話した。第6回の面接(解放期)では、「もう、居直っている]と落ち着きを取り戻していた。これは絶望という感情がかきたてられない時期に至ったと思われた。困難な体験を物語ることで、感情を自分のものとして、主体的に体験していった。それによって、Aさんの困難な出来事は意味を与えられ、自分の一部として統合された。 2.1989年から2002年までの「患者-看護師関係での共同意思決定]の総括 筆者の13年間に及ぶ研究を踏まえて、そこから得られた知識を、Dr. Hesook Kimの提言する哲学・理論と方法論の2つの軸から分類する科学的多元論の立場で総合的考察を行った。批判的内省法による共同意思決定の概念枠組みは、行為科学(action science)へのパラダイムの転換を遂げており、その意思決定の過程は記述期、内省期、そして解放期を経る弁証的実践と考えられた。
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