悪性疾患患児の親の状況危機と援助に関する研究である。平成12年度の研究は一年目のテーマ"闘病生活における状況危機と援助ニーズ"の結果から、長期間の心身の疲労、留守家庭の子どもの問題(付き添いとの関連)、その間に発生する夫婦間のずれが危機要因であった。それを基に二年目のテーマ"闘病生活により発生する家庭崩壊要因"を展開した。 対象は調査同意の患児の母親・父親8組と、母親のみ35名であった。方法は質問紙調査と一部面接調査を含み行った。 患児の病名は白血病23名、その他悪性疾患16名、難治性重篤疾患4名である。発症年齢は幼児前期6名、幼児後期11名、学童14名、思春期12名であり、平均闘病期間は6.7年である。調査時の親の年齢は40代から51.2%である。 闘病生活の苦しい時期と内容について、1年次内、2〜3年、4年以上でみると、どの時期も(1)患児の問題が圧倒的に1番多く95.3%で、年数を経ると5%減少する程度である。患児を心配し、看取りたく、97.5%が付き添い、または病状のすぐれない時など選択的付き添いを希望しているが、36.1%は付き添うことはできなかった。しかし付き添う親は、患児と他の子の間で葛藤状態にある。 (2)2番目に問題になるのは時期を問わず心身の疲労である。4年以上経ても46.7%持続している。苦しい時期に夫婦間の感情的ずれやきびしい口論・うつ病のように落ち込んだ人、Mood Scale15以上で感情がそこなわれている人、性格が普通より弱っている・普通より大らかでない人、ソーシャルサポートが少ない人、これら1項目以上に属する人は60%で、闘病生活における心身の疲労を裏付けている。 (3)3番目は留守家庭にいる他の子の問題である。この状況をサポートしている人は平均4.1人と少ないが、苦しい時は真に支える人のみがリストされている。親族とりわけ実父母が物心両面で支えている。 闘病生活で、母親は患児の生命不安を抱きながら苦しむ子を十分に世話をしたい、しかし留守家庭との間で葛藤状態となり、心身ともに疲労している。父親も同様に疲労しており、感情的にずれやすい状況にあることが、家庭崩壊の要因になっている。その要因を左右するものは、親族、友人、医療関係者、カウンセラー、同病の母親、社会システムなど、医療・教育・経済を含んだサポート体制で、心身の疲労を軽減させられるかどうかにかかっている。
|