研究概要 |
脳の一次機能を刺激する調理活動は老年期痴呆高齢者の残存機能の維持及び情動の活性化に有効であるか,否かを明確にするために以下の研究を行った。 大阪府下の藍野学院関連施設に入院中の痴呆高齢者36名を調理実施群18名(男性3名,女性15名)と非実施群18名(男性4名,女性14名)に分け,さらに脳血管型痴呆18名,アルツハイマー型痴呆18名の4群に分けた。なお,被検者の平均年齢は79.11±9.79歳である。 評価方法は,調理活動による知識の変化は「長谷川式スケール」,毎回の活動終了後の記憶の定着は「認知機能チェックシート」,調理活動前後の認識面・行動面の変化は「KOMIチャートシステム」で各々測定・分析し,以下の結果を得た。 1.調理実施群は非調理実施群に比べて問題行為の減少や調理活動終了時の満足度の上昇および認知機能に有意な変化が認められた。 2.長谷川式スケールでの知識変化はアルツハイマー型痴呆と脳血管型痴呆との間に有意差は認められなかった。 3.KOMIチャートシステムの認識面(役割・小管理・健康・家計)は5%,行動面:第2分野(会話),第3分野(変化)は1%の有意差で脳血管型痴呆の方が改善された。 4.認知機能チェックシートでは焼き加減,手続き記憶,条件反射の学習効果およびエピソード記憶・条件反射・刷り卸す・判断力・焼き加減共にアルツハイマー型痴呆が5%の有意差で改善された。 以上の結果から,調理活動は調理の準備から後始末まで一連の関連動作を想起させ,他者との交流を図りながら,痴呆高齢者の生活の小管理,健康,役割を維持し高めることができると考える。次年度は今回得られた結果をもとに,地域での通所痴呆高齢者を対象に系統的な研究を実施する。
|