本年度は、「食事・運動・薬物療法の日常生活における困難さ」についての質問紙作成と予備調査を行った。まず、AA.IrvinによるEBAS(Environmental.Brriers to Adherence Scale)に基づく質問紙作成のため、日本での調査に用いる了解を原著者に求め、承諾を得た。次に日本語による質問紙を作成し、第1回目予備調査を行った。不適切な表現を修正し、その上で第二回目の予備調査を行った。対象者は、京都府ウオークラリー参加者および京都大学医学部附属病院入院患者の102名であうた。対象の属性は、平均年齢61.7歳(SD6.31)、平均罹病期間10.4年(SD8.41)である。日本語版GHQ(精神健康度調査)においては、要素A(身体症状)、要素B(不安と不眠)、要素C(社会的活動障害)は40〜50%が健常群、要素D(うつ傾向)では70%が健常群であった。EBASの得点については、食事療法(質問数18、点数幅18-90)の平均得点が38.1(SD4.84)、インスリン療法(質問数13、点数幅13-65)は19.5(SD19.5)、経口薬療法(質問数13、点数幅13-65)は18.0(SD4.84)、運動療法(質問数16、点数幅16-80)は34.0(SD9.46)、および自己血糖測定(質問数13、点数幅13-65)は25.9(SD4.59)であった。各セクションの最大得点と比較すると、運動療法が最も高い困難度を示した。EBASセクション内の信頼性分析(α係数)は食事0.8857、運動0.8662、インスリン0.8064、経口薬0.8140、血糖測定0.6543であった。食事・運動・インスリン・経口薬に関しては、次回調査に用いることができると判断し、血糖測定に関しては、調査数を増やして再度検討する必要があると思われた。 また、自由記載による内容では、80%以上がEBAS項目に分類可能であった。「意志が弱い」など情意面に関わる内容(約20%)に関しては、具体的な質問項目として今後の調査に含める方向にて検討をしている。
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