研究概要 |
本年度は,1型糖尿病患者の食行動異常について医師を対象に第2回目の質問紙調査を行うとともに,500床以上の病院の栄養士および看護職者(外来部門・入院部門)を対象に質問紙調査を行った。医師を対象にした第2回目調査では246の回答,栄養士が対象の調査では143の回答,看護職者が対象の調査では260(外来部門140,入院部門120)の回答が得られた。食行動異常を呈している1型糖尿病事例の治療・指導・ケア経験において,医師は「治療経験あり」が71人(28.8%),「治療経験なし」が174人(70.7%),栄養士は「経験あり」が37人(25.9%),「経験なし」が106名(74.1%),看護職者は「経験あり」が外来部門45人(37.5%),入院部門48人(34.3%),「経験なし」が外来部門73人(60.8%),入院部門90人(64.3%)であった。 概要が報告された事例は,医師(第2回目)から現在事例として45事例(女性38),過去事例として69事例(女性57),栄養士から現在事例として22事例(女性20),過去事例として52(女性43),看護職者から現在事例として39事例(女性33),過去事例として28(女性20)であった。医師,栄養士,看護職者とも、報告事例は女性が80%以上を示し,年齢では20歳代が最も多く,次いで10歳代と30歳代が多く見られた。示されている症状は,過食,SIV(自己誘発性嘔吐),拒食,隠れ食い,緩下薬の乱用,利尿薬の乱用などともに、インスリンの減量や中断がみられ,10歳代および20歳代では2つ以上の症状が合併して見られることが多く,3症状あるいは4症状を呈している事例が見られた。これらの事例は摂食障害(DSM-III)に極めて類似した症状を呈していると考えられた。 医師からは,本人からの訴えがないため診断が遅れること,またカウンセリングを依頼する適切な部門や人材の不足などの意見があり,栄養士らは,栄養指導が逆に拒食などの食行動異常を引き起こす可能性があること,栄養指導では十分な対応ができない難しさ,看護職者は,精神面のケアの必要性を痛感するが技術が伴わない等の意見があった。 本年度はさらに,摂食障害に類似した食行動異常の経験のある1型糖尿病患者,および1型糖尿病の治療を続けながら医療に携わっている方々にインタビューをおこなった。
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