GDNFはドパミン神経細胞の栄養因子として同定されたグリア細胞由来の神経栄養因子である。最近、GDNFのアミノ酸配列と相同性を有する新規の栄養因子として、ナツーリン、ついでパーセフィンが発見された。パーセフィンはドパミン含有ニューロンの培養状態での生存を促進する作用を有し、これらのニューロンの6-水酸化ドパミン毒性に対する保護作用を有することが見いだされた。さらに、パーセフィンは培養さ運動神経の生存も促進し、生体では坐骨神経切除後の運動ニューロンの生残を促進することも確認された。これらの知見から、パーセフィンはドパミン神経が変性するパーキンソン病、運動神経が変性する筋萎縮性側索硬化症などの原因不明で治療法の確立していない神経変性疾患でのパーセフィン分子の病態変化の研究が必要と考え、平成11年度から12年度にかけて検索した。 平成11年度において、パーセフィン分子のアミノ酸配列のN端とC端の中で、GDNFなどと相同性のない部分配列についての合成ペプチドを作製した。このペプチドをKLHとMBSをもちいてコンジュゲートし、これを免役原とし、平成11年度から平成12年度にかけて家兎に免疫することを試みた。これまでの、当研究室でのNerve growth factorとBrain-derived neurotrohic factorでの抗体作製の経験から、これらの神経栄養因子については、月1回の免疫で12回あまり追加免疫を繰り返すことにより、十分な抗体価をもつ抗血清を得られることが、判明している。しかし、2年あまりのブースターにもかかわらず、C末端とN末端のいずれについても、これまでのところ十分な力価のある抗体は得られなかった。さらに、引き続いて免疫をくりかえす必要があるが、これは終了し、パーセフィン分子の他のアミノ酸列の部位の合成ペプチドをもちいての抗体作製を試みる方針へ変更することとした。十分な力価が得られなかった理由はあきらかではない。GDNFファミリーの神経栄養因子とNerve growth factorファミリーの神経栄養因子の分子立体構造の差や細胞内での存在様式の差などを理由として推測している。
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