昨年度、自己免疫性、炎症性ニューロパチーに対する新たな治療法の可能性として、Cyclooxygenase-2(COX-2)インヒビターが実験的アレルギー性神経炎(EAN)に有効であることを報告した。そこで次にヒトの生検神経におけるCOX-2の発現を検討した。慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチー(CIDP)では、活動性の脱髄部位に一致してCOX-2陽性のマクロファージが認められた。またm-RNAレベルの増加を確認した。したがって、CIDPにおいて治療の選択肢の一つとしてCOX-2インヒビターが有効な可能性がある。 CIDPの成因において未だ自己抗体の関与は明らかでない。我々は1症例であるが、抗ガラクトセレブロシド抗体が高値を示し、症状の改善と共に抗体価が低下することを報告した。神経生検では電顕で髄鞘のuncompactionをみとめ、この抗体が病態と関わることを示した。 ポリニュロパチーの成因は多様であるが、とくに軸索障害性のもので難治の患者が少なくない。生検上再生所見に乏しい。この場合、シュワン細胞の細胞周期の停止、増殖の停止が病態と関わるのではないかと考え、軸索由来の栄養因子として最近注目されているneuregulinについて、ヒトの神経組織を検討した。その結果、neuregulin-β1は、急性の軸索変性期の軸索と活発な再生軸索に強く発現していた。一方、慢性期のニューロパチーで再生のない神経では、ほとんど発現がなかった。以上より、何らかの方法でneuregulinを導入できれば、シュワン細胞の脱分化、増殖をおこし、神経再生を誘導できる可能性を示した。
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