研究概要 |
『原論』第1巻から第4巻について,構文分析を行なうプログラムを作成し,分析結果を検討してデータ,プログラムを拡充,改良する作業を繰り返し行なった.あわせて,文章がどこまで類似していれば同じ構文として分類するか,という検討も行ない,その結果をプログラムに反映させた.当初は,グラフィカルなインターフェースを持つプログラムによるインタラクティヴな作業を考えたが,一貫した正確な構文分析結果を得るために,プログラムに必要なデータを事前に与えて作業を自動化することに方針を変更した.『原論』は単語の種類が非常に少なく,定型的な表現が非常に多いため,通常の自然言語分析よりは作業はかなり簡単であることを予想していた.しかし,すべての表現を分析するために与えるべきデータ量はさすがに当初の予想よりはかなり多く,一部の作業は二年度目に残されることとなった.しかし,これは基本的には,単純な量的な問題であり,遅れはすみやかに取り返せると思われる.ここまでの作業で,大半の表現は自動的に分析されることが確認でき,本研究がきわめて有用な資料的基礎を築くことを確信するに至った.年度後半には,命題内部,命題間の理論的依存関係をどのように表現して,分析結果のファイルに取り込み,同時に利用可能にするか,という課題についても検討を始めたが,当面は構文分析を完全にすることに集中した.本研究の方針全体に関してレヴューを受けるため,リヴィエル・ネッツ氏をスタンフォード大学から招聘し,多くの有益な示唆を受けた.
|