本年度の研究実施計画に基づき以下の諸点を中心に研究を予定通り遂行した。 1.国内で刊行されている「生物学史研究」、「科学史研究」、「Histria Scientiarum」に掲載された生物学史関係論文の題名、著者、領域等のパソコンへの入力を終え、さらにキーワード検索ができるようにキーワードを設定した。 2.外国の生物学史研究の動向を知るため、「Journal of History of Biology」掲載論文の特徴を解析した。その結果、同誌では1970年代以降、進化論に関する論考が増加し、全論文の約3割を占めることが明らかになった。また、生化学・分子生物学の歴史に関する研究も多数見られた。一方、日本の上掲誌でも進化論関係の論文は多いが、その数は2割以下であった。生化学・分子生物学史はごく少数しかみられなかった。 3.日本の生物学の展開に大きな影響を与えたと考えられている米国ウッズホール臨海実験所の刊行物を分析した。1890年代から日本人研究者が同実験所へ赴き、研究を行なっているが、具体的な内容が窺える保存資料は乏しかった。 4.日本では明治初期の生物学者に静岡県出身が多いことが判り、浜松市を中心に現地調査を行なった。しばしば言及される県民性や風土と生物学者の出現に強い関連があるとは思われなかった。また、県史、郷土史を調べても産業界で活躍した出身者に比べて記述が乏しかった。
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