研究概要 |
1.唾液分泌型免疫グロブリンAと上気道感染症罹患との関係を検討するために,大学のサッカー部で活動する25名を対象に,安静時の唾液分泌型免疫グロブリンAの測定,および上気道感染症の自覚症状と自覚的コンディションのアンケート調査を毎週1回の頻度で8週間実施した.全期間をとおして,安静時の唾液分泌型免疫グロブリンAの分泌量には有意な変化はみられなかった.上気道感染症の症状を有する時期は唾液分泌型免疫グロブリンAの分泌量が増加する傾向があった.安静時の唾液分泌型免疫型グロブリンAの分泌量と上気道感染症罹患率とに明らかな関係はみられなかったが,さらに対象数を増やし,研究期間を長くして検討する必要がある. 2.継続的な運動が唾液分泌型免疫グロブリンAの安静時分泌量に及ぼす影響を横断的に検討するために,運動教室に参加して継続的な運動を行っている群(運動群)と運動をしていない群(非運動群)を対象として,安静時の唾液分泌免疫グロブリンAを測定した.唾液は,清浄な綿を1分間咀嚼させて全唾液を採取した.分泌型免疫グロブリンAは抗secretory component抗体と抗免疫グロブリンA抗体によるsandwich ELISAで測定した.1分間の唾液分泌型免疫グロブリンA分泌量は,運動群(74名)が27.5±15.5μg/min,非運動群(93名)が19.9±14.9μg/minで,運動群が有意に高値であった(p=0.001).継続的な運動により唾液中の分泌型免疫グロブリンAの分泌量が増加する可能性が示唆された.
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