研究概要 |
平成11年12月〜平成13年1月に実施したアンケート調査「運動部顧問の指導信条に関する調査」の分析結果を中心にした「運動部顧問離れのメカニズム」(発表者:海老原修)ならびに「学園ドラマにコード化される顧問教師像」(発表者:松橋理、共同研究者:海老原修)を平成12年10月上旬日本体育学会第51回大会で口頭発表し、日本体育学会体育社会学専門分科会発表論文集にその内容を掲載した,前者では指導信条や顧問承諾事由を用意する際に、「ホンネ」と「タテマエ」の2重のコーティングを用意する結果、その中心に「どうでもいい」というニヒリズムが生成される3重構造が構築される可能性を論考した。また、後者では「青春とはなんだ」に始まり「金八先生」や「GTO」へと連綿と続くいわゆる青春ドラマ・学園ドラマが発信するメタ的なメッセージが虚構としての教師像を創り上げ、その虚像と実態のアンビバレンスに苦慮するという仮説検証を試みた。この虚像は「ホンネ」であろうが「タテマエ」であろうが、いずれかの1枚分のコーティングとなりうる。これに、教師の実体験に基づく競技信条とそこから生まれる自身の指導信条のアンビバレンスが加わる。すなわち、周囲が期待する虚構としての教師像に指導に係るアンビバレンスな信条が組み込まれることで、3重のアンビバレンスが生成されていると考えることができた。このような3重構造を基本的な枠組みの妥当性や問題点について、現職の顧問教師や研究者を対象にインタヴューして意見交換した。さらに、このような問題の遠因となる社会システム論的な視点から、少子化にともなって出現した連合・合同チーム編成や外部指導者導入といった学校運動部システムそのものあり方についても意見交換した。休廃部の続く企業クラブ、総合型地域スポーツクラブ、民間のスポーツクラブと学校運動部が連携・協力するしなやかな指向性が論議される可能性も否定できない。
|