安静立位を保持し、両側上肢を同時に前方水平位まで屈曲させる運動を、自己ペースでしかも最大速度で実施した。その上肢運動に先立って、股関節角度を屈曲10゜から伸展10度まで5度刻みにセットした。その場合股関節角度は0゜は、体幹を前屈位から後屈した場合に背筋から腹筋に活動交替が生じる時点の角度とした。ビデオ解析により、上肢運動停止時点までの足関節及び股関節の角度変化を求め、さらに三角筋、腹直筋、脊柱起立筋、大腿直筋、大腿二頭筋の表面筋電図を検出し、三角筋の活動開始に対する姿勢筋の活動開始の時間差、及び活動開始から50ms間の筋電積分値を求めた。主に次の結果を得た。 1)股関節と足関節の移動角の間には、r=0.956の極めて高い相関が得られた。初期股関節角度が伸展位では、全被験者において股関節が屈曲方向に運動した。それに対して、初期股関節角度が0゜と屈曲位では、股関節が伸展側と屈曲側に運動する者が約半数ずつ認められた。 2)全試行において、姿勢筋である脊柱起立筋と大腿二頭筋に、上肢運動に関連した第1相のバースト活動が認められた。その筋電積分値には初期股関節角度による有意差が認められないのに対して、活動開始時間には初期股関節角度の影響が認められ伸展位から屈曲位に移るにつれて早くなった。また、両筋の活動開始時間には比較的高い相関が認められた(r=0.695)。 3)初期股関節角度が5゜と10゜の屈曲位では、股関節移動角に関わりなく両姿勢筋の活動開始は三角筋に先行した。一方、初期股関節角度が0゜と伸展位では、両姿勢筋の活動開始時間は、股関節移動角の影響を受け、股関節が屈曲側に運動する場合に三角筋に対して遅れることが多くなった。加えて、初期股関節角度が伸展位では、腹直筋と大腿直筋の活動減少の早期開始が、多くの被験者に認められた。
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