研究概要 |
上肢屈曲運動時の姿勢制御様式が、類似の上肢運動を含むスポーツでも実際に出現するかを検討した。被験者は、18〜25歳の健康な男子7名、女子8名からなる。初めに、安静立位にて自己ペースでの上肢運動を行った。上肢は肩関節を軸にして水平位まで可能な限り速く屈曲し、約3秒間保持した。試行は、30秒の休憩を挟んで10回行った。次に、テニスストロークを床反力計上で行った。その場合の左足の長軸を前方に向け、右足の長軸を左足に直交するようにした。左足のつま先から右足の外側縁までの距離を40cmとした。ボールは被験者から7mの位置より、3.5mの誘導路を通じて落下させ、バウンドを一回した後、被験者の腰の高さに達するようにした。腰の位置に到達した時の速度は3m/sであった。ストロークは、中等度の速度で、前方2mの高さに設置した直径50cmの円形的を狙って行った。試行は15回行い、測定には後半の10回を用いた。ボールのインパクト時点は、ラケットに取り付けた加速度計にて測定した。安静立位時での上肢屈曲運動時およびテニスストローク時の左股関節運動角を測定するために、電気ゴニオメータを用いた。安静立位での両側上肢屈曲運動時の股関節運動角は、-0.2±4.8度(マイナスの値は伸展運動を示す)であり、テニスストロークにおけるインパクト時までの安静立位時からの股関節運動角は、12±9.9度であった。同様に、上肢最前方到達時点までには、6.0±10,9度であった。インパクト時までの股関節運動角は、安静立位での股関節運動角とr=0.773(p<0.001)の高い相関を示した。また、上肢最前方到達時までの股関節運動角は、安静立位での股関節運動角とr=0.696(p<0.01)の比較的高い相関を示した。このように、安静立位時における上肢屈曲運動時の姿勢運動様式が、テニスストローク時にも認められることが明らかになった。
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