研究概要 |
実験動物(Fischer344系)ラット骨格筋に損傷を与え,その回復過程における組織学的・生理生化学的検討を行った。被験筋とした足底筋に対し直接電気刺激による強縮中に機械的に引き延ばす伸張性収縮をおこなった。収縮回数を5〜10回と60回を比較した場合では60回に明らかに損傷線維が多く見られ,マクロファージの浸潤面積が拡大した。収縮強度(参加運動単位数)・可動範囲(関節角度変化)等の他にも収縮回数が損傷誘発の大きな要因となることが示された。筋線維タイプ別に伸張性収縮に対する易損性を検討した結果,明らかに崩壊する線維については、90%以上が速筋線維typeIIbがであることが示された。また、筋の横断構造に見られ、数十本の筋線維束を作っている筋周膜に隣接するtypeIIb線維にもより損傷発生率が高く、収縮伸展時の摩擦に原因があることが推察された。次に,損傷量の大きさとトレーニング効果,あるいはトレーニング期間の違いとの関係を調べ,損傷量が大きい場合には酸化系優位な速筋線維typeII占有率が増加することトレーニング期間を延長した場合はミオシン組成における混在線維とtypeIIb線維が減少し,より有意なトレーニング効果としてのタイプ移行が進んだ事実が得られた。 また,損傷筋において一横断面上の筋線維数を算出した結果,対照群3309本に比べ損傷筋では3872本と有意に高値を示した。このことは損傷筋内に再生筋線維と考えられる極細線維が多数観察された結果であり,増殖あるいは枝分かれ線維の発生が原因と考えられた。この極細線維は腱から腱までの一本の筋線維ではなく,枝分線維であり収縮機能・代謝特性など母線維とほぼ同様の特性を有していた。しかし,細い枝分線維は協同筋切除による慢性刺激に対しても肥大能力を持たず,成長因子に欠陥を有するものであった。
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