50歳代、60歳代、70歳代の被験者(各年代とも男性7名)を最大努力、最大努力の80%、および最大努力の60%で筋力を発揮する3グループに分けて、肘関節の屈曲および伸展運動を負荷した。1回の運動は、3秒間の随意収縮と7秒間の休息を屈曲動作で5回繰り返し、1分間の休息を挟んで、さらに、3秒間の随意収縮と7秒間の休息を伸展動作で5回繰り返し、これを1セットとして、セット間に5分間の休息を挟んで、計3セット行う方法を用いた。運動は月曜日から金曜日まで、毎日、午前と午後に1回づつ行い、土曜日に3グループとも最大努力での発揮筋力を測定した。運動は20週間にわたり継続した。その結果、最大努力で運動を継続した50歳代および60歳代のグループは、運動開始前に対して最大発揮筋力が有意に増加した。一方、70歳代のグループでは運動による最大発揮筋力の増大は認められなかった。以上の結果より、60歳代までは最大努力による発揮筋力にトレーニングの効果が認められるが、その効果は最大努力で筋力発揮を行う運動を継続した場合にだけ認められることが明らかになった。これは、最大努力での筋力運動が、大きな力を発揮する際に働く「速筋線維」を選択的に参加・動員していることによるものと推察される。一方、70歳代では運動強度に関係なくトレーニングの効果は認められなかった。これは、70歳代では運動に対して「速筋線維」の参加・動員が不可能なことによるものと推察される。なお、本研究は2年にわたり行われるので、次年度は女性を被験者として研究を進める予定である。
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