体育・スポーツ場面において、高い競技パフォーマンスを達成する上で重要な要因となっている能動的注意能力を、身体的、情動的、認知的要因に関する基礎的な実験とトレーニング関する応用的実験であるバイオフィードバックトレーニング、これらを基にした事象関連脳電位を用いた至適注意力とそのメカニズム実験から検討を行うことを目的とした。 実験1では、実験では、比較的試合時間の長いサッカー、テニス、バスケット、バレーボール選手と陸上競技、水泳選手各20名を対象に、電動式深径覚検査器を用い視覚注意機能の特徴について検討を行った。その結果、競技経験年数により有意に前者競技グループの選手が安定したパフォーマンスを示した。 実験2では、注意メカニズムに影響を与える情動的要因として特性不安を取り上げた。心拍バイオフィードバックを用い、高特性不安者は低特性不安者とは反対に心拍を低下させることにより、覚醒状態を低下させ、一定のパフォーマンスを維持することに努めていることが明らかにされた。 以上の実験結果は、注意に関するこれまでの精神生理学的研究が、賦活や覚醒水準における比較的持続的な変化として、自律反応を中心にした研究を補うものであった。外的刺激や環境の急激な変化によって誘発される一過性の変化、すなわち瞬時の状況判断といった情報処理過程に関する研究の少なさから、次年度の事象関連脳電位P300を用いる本実験は、定位反応や意識下での注意能力の変動を明らかにできるものと考えられる。
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