研究概要 |
安定同位体^<13>Cを標識したグルコースやフルクトースを経口摂取すると,生体内で酸化され,呼気ガス中に^<13>CO_2となって排出される.通常の炭素(^<12>C)は,^<12>CO_2として排出されることから,呼気ガス中の^<13>CO_2と^<12>CO_2の同位体比(^<13>C/^<12>C比)を連続計測すれば,摂取糖質の酸化利用動態がわかる.前年度に確立した^<13>C/^<12>C比連続計測法を用いて,本研究では,フルクトース酸化利用動態について検討した.そしてフルクトース経口摂取が運動時の循環調節に及ぼす影響についても検討した.健康な成人10名が,60%VO_<2max>の負荷で,40分の自転車作業(1回目)を行った後,安定同位体^<13>Cを標識したフルクトース溶液(F条件),あるいはプラシーボ水溶液(W条件)を摂取し,再度,60%VO_<2max>負荷で60分間の自転車作業(2回目)を行った.両条件の2回目の運動時における呼気ガス^<13>CO2の連続計測から^<13>C/^<12>C比を測定し,そのタイムコースからフルクトースの酸化利用開始点を明らかにした.また2回目の運動時における動脈血圧心拍数,筋血流,皮膚血量等の循環応答を2条件間で比較した.その結果,経口摂取フルクトースの酸化利用開始は,2回目の運動開始後12±4.3分からであり,ピークは53±4.0分に現れた.60分間の運動中の酸化利用率は,25±10%であった.またこの時の平均動脈血圧をはじめ循環変数には,F条件とW条件間の相違はみられなかった.これらの結果は,グルコース経口摂取の酸化利用動態および循環応答を研究した先行研究結果とは異なるものであった.特にグルコース摂取が運動時の動脈血圧を低下させる効果をもつと報告した先行研究とは異なり,フルクトースは同じ単糖類であっても,グルコースのような血管拡張作用をもたないのではないかと推測された.
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