研究概要 |
[目的] 本研究では,温熱負荷時の皮膚血流調節と発汗制御における中枢性・末梢性機序の検討について陸上運動鍛錬者と水泳鍛錬者との比較から,トレーニング環境の異なる鍛錬者の体温調節機能の特徴を明らかにすることを研究目的とする.水中での発汗は体温調節においては無効発汗となること,水中運動では水の物理的特性(熱伝導率が高い)により陸上運動と比較して容易に体温上昇を押さえらる.このことから水泳鍛錬者と陸上運動鍛錬者ではその体温調節機能は異なると考えられる. [方法] 実験の目的,内容の説明後,被験者として協力する事を承諾した男子水泳,陸上選手を対象に26.0℃,40%rhに設定した人工気象室にて利き手と反対側の手を水温を35℃の浸漬し,その後水温を38,40,43℃まで段階的に上昇させ温熱負荷を行った.レーザードップラー血流計を用いて,中指末節掌側および前腕部外側に血流プローブを装着して,皮膚血流量の変化を測定した.皮膚血流量の変化から温熱血管収縮反応(Heat-induced vasoconstriction:HIVC)を検討した. [経過及び結果] 第2年度では運動による温熱負荷を予定していたが,前年度の実績,また実験機器等に問題があった為,第2年度も引き続き温水による温熱負荷実験とした.今年度は手の温浴による温熱負荷時の温熱血管収縮反応の観察を行っており,現在,結果の解析中である.これまでの観察からHIVC発現パターンが両群で異なっており,同じ運動鍛錬者であっても水泳鍛錬者と陸上運動鍛錬者というトレーニング環境の違いによりその体温調節機能に影響を及ぼしていることが推測される. 今後は,運動による温熱負荷,冷血管拡張反応(Cold-induced vasodilation:CIVD)の測定も加えて,水泳鍛錬者と陸上運動鍛錬者の体温調節機能の違いを検討したいと考えている.
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