研究概要 |
筋の構造要因である筋線維長は、機能的な指標であるミオシンATPase活性とともに、筋の収縮速度を決定する重要な因子と考えられていた。動物の摘出筋で確認されたこの事実をスポーツ選手においても確認するため、短距離選手と長距離選手の下肢筋群における筋線維長の比較を行なった。その結果、短距離選手の筋束長(筋線維の束)は長距離選手のそれよりも明らかに長いことが示された(Med Sci Sports Exerc,2000)。次に、短距離選手のスプリント能力と筋束長との関係を検討した。日本記録保持者を含む男子短距離選手の筋束長と100mのベスト記録との間には有意な負の相関関係が認められた(J Appl Physiol,2000)。このような関係は女子短距離選手の筋束長とスプリント能力との間にも観察された(Acta Physiol Scand,2000)。 短距離選手が長い筋束長を獲得した背景については、まだ充分に明らかになっていない。遺伝的要因と環境因子としてのトレーニングの影響について検討してゆく必要がある。
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