研究概要 |
本研究では、"温熱脱水レベルが運動時の体温調節および有酸素的・無酸素的運動能に及ぼす影響"について着目した。平成11年度で、脱水レベルと有酸素的・無酸素的運動能との関係について検討し、平成12年度では、脱水レベルと変動負荷運動時の体温調節および運動能についてまとめた。 1)脱水レベルと有酸素的・無酸素的運動能 1.血漿量と有酸素性運動能(最大酸素摂取量:VO2max)の関係 循環血漿量は、T-1824(Evans'Blue dye)を0.5%溶液で5ml投与し測定した。血液量(BV)は、血漿量(PV)とヘマトクリット値(Hct)からBV=PV/(1-Hct/100)にて算出した。循環血漿量および血液量はいずれもVO2maxとの間に有意な相関を示した。また、乳酸性作業閾値(4mmol)時での酸素摂取量と循環血漿量との間には有意な相関がみとめられた。 2.脱水レベルと有酸素性・無酸素性運動能 運動前負荷として体重あたり3%を超える脱水負荷が課された。1時間の安静(25℃,RH40%)後、60%VO2maxの運動強度30分間の自転車運動を行った。その結果、対照と比して心拍応答および食道温で有意な高値がみとめられ、脱水による循環血漿量の低下が影響することが示唆された。Wingate testによる無酸素性運動能は、脱水によりパワー持続能に影響を受ける傾向にあった。 2)脱水レベルと変動負荷運動時の体温調節および運動能 変動負荷は40%〜80%VO_2maxの範囲で、80%VO_2maxで20秒間運動を課した。1回の強度の変化時間に約5分間かかり、45分間で繰り返し行った。その結果、間欠的高強度運動の影響が体温上昇に反映した。体温および心拍応答と血液量の関係では、血液量および持久的運動能と体温調節との間に負の相関関係がみとめられた。運動時の血漿量の変化において、相対的減少量は平均15%であった。VO2maxの約50%を超えると、血漿の筋組織への水の移動がみとめられている。血液量の多いものほど相対的に高値を示すが、絶対量で換算してみると循環血液量は安静時血液量と正の相関関係がみとめられた。
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