研究概要 |
今年度は研究2年目に該当し,乳児から最長2歳児の四足歩行をDVカメラを用いて記録し,その歩容の個体発達過程をHildebrand(1966)の歩容グラフ上に記述し,可能な範囲で速度を求める事を目的とした。撮影の頻度は週1回,二足歩行移行後は年2〜6回程度とした。ここでは現時点で主な移動様式が二足歩行に移行した後も記録できた3児の四つ這いに焦点を絞り,その結果の概略を以下に記す。 1,今回得られた歩容は全てLS(diag.cpts.)とTrotのWalk(very slow,slow,moderate)であり,四つ這い開始初期の歩容はLS-very slow,slow,二足歩行開始の頃はTrot moderateであった。 2,男児Aの事例。生後36週に四つ這いを開始し歩容はLS-very slowであった。その後LS-slowの範囲で速さを増し,47週からはmoderate,49週に独立二足歩行開始以降はTrotで速さは遅くなった。よく歩くようになった52週はLS-slow,以降61,68週ほぼ同様,103週ではTrot-slowであった。 3,女児Dの事例。生後33週に四つ這いを開始し,歩容は35週でLS-slow,翌36週以降は全てTrotで生じた。速さは漸次速くなり二足歩行開始直前の46週からはmoderateとなった。50週でよく歩くようになって以降は遅くなり,58,67週ではslowとなった。 4,男児Eの事例。生後35週に四つ這いを開始し,LS-very slow,翌週はLS-slow,以後漸次速さを増しながら43週からTrot-moderateへ移行していった。50週の二足歩行開始以後速さが遅くなり57週ではLS-slowへ戻ったが,60,71週ではLS-moderateとなった。 5,速度は3児同様に,四つ這い開始初期は約20cm/秒で最も遅く,二足歩行開始の頃は約55〜60cm/秒で最速となり,二足歩行移行の後は30〜40cm/秒と速度が一時遅くなった。二足歩行という新しい移動様式を獲得するために,それ以前の移動様式である四つ這いは抑制されるのではないかと考えられた。
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