研究概要 |
1.皮膚冷却におけるランプ収縮張力と運動単位閾値張力関係 ランプ収縮張力勾配(3秒・5秒・7秒)を変化させることで,皮膚感覚系からの入力がmotorneurons(MNs)へいかなる影響を与えるか検討した。その結果,単位時間当たりの張力発揮が大きい場合(3秒),温度低下によって閾値が減少したのに対し,単位時間当たりの張力発揮が小さい場合(7秒),通常皮膚温時(T_C)の閾値張力に近いか逆に増加する傾向を示した。その中間である5秒ではわずかに閾値張力が低下する結果を示した。単位時間当たりの張力発揮が異なるランプ収縮は,皮膚感覚系からの入力とMUsのfiring rateの関係によって脊髄のmotoneuronへの影響が異なることが示唆された。 2.皮膚冷却刺激がeccentric収縮(EC)時の運動単位活動様式に及ぼす影響 皮膚冷刺激によるEC時のMUs活動様式への影響を検討した。その結果,皮膚温冷却時におけるconcentric収縮(SC)に対するECの閾値張力差は,増加傾向を示した。その相違をT_C時の閾値張力で補正すると,T_<26>時のSCでは明らかに減少するのに対し,ECでは逆に増加することが確かめられた。このことから,ECにおけるHT-MUsの選択的活動機構は,皮膚冷却刺激において強い影響を受けることが確認された。 3.中学・高校・大学・社会人の上位男女50名の100m記録保持者へのアンケート調査 100m走の記録と出生地における12,1,2月の月平均気温平年値との間に有意な関係は示されなかったが,これは1/100秒の小さな差の中での関係を見たためと考えられる。しかし,地域別の人数を検討すると,気温の低い地域の出身者が多い結果が示された。また,他のアンケート項目である開始年齢・トレーニング場所・筋力トレーニングの有無・ウエアー等における差は示されなかった。 以上の結果より,冷刺激は速筋に影響を与え,トレーニングに応用できる可能性が示唆された。
|