女子スポーツ選手の初経遅延におけるメカニズムについての仮説は一様構築されている。つまり、トレーニングにより体脂肪量に対する除脂肪量の割合を上げることにより、性腺刺激ホルモンや卵巣ホルモンの血中循環レベルを変化させることが初経遅延のメカニズムと仮説されるのである。しかしながら、この証明はまだ成されていない。そこで、女子個人の身体的成熟度の指標年齢と初潮年齢の差を求め、その差を非運動選手群(対照群)と比較することにより初経遅延の立証を試みるものである。 本研究は、基本的には以上述べた女子スポーツ選手の初経遅延の立証を、ウェーブレット補間法を適用することにより客観的に導こうとしたものであるが、個人差の要因により初経遅延の構図は大きく異なることが予想される。そのために個人差を考慮に入れた初経遅延の評価基準を構築し、個々人の初経遅延を評価することにより女子スポーツ選手の初経遅延を検証しようとするものである。そして、女子スポーツ選手における月経不順、無月経等との関わりに対して、学校保健上の問題へ提言する意味を持つ。以下に得られた知見を示す。 先ず、運動選手群の初経年齢は12.75歳(SD=1.23)、対照群の初経年齢は12.11歳(SD=1.09)で両群においては有意差(P<0.05)が認められた。つまり、運動選手群の方が初経年齢は遅いことが示された。次に、身長のMPV年齢を両群で見ると、運動選手群は11.13歳(SD=1.04)、対照群は11.0歳(SD=0.96)で有意差は認められなかった。そして、このMPV年齢と初経年齢の差を両群で比較したところ、運動選手群で1.62歳(SD=1.25)、対照群で1.08歳(SD=0.74)となり明らかに有意(P<0.05)が認められ、運動選手の初経遅延が示唆された。さらに身長のMPV年齢に対する初経年齢の回帰評価をスポーツ種目別選手に適用したところ、50%以上の正の得点を示した種目はソフトテニス、ホッケー、陸上競技、バレーボールでありこれらの種目は特に強い初経遅延を生起していると推察された。これら種目の選手の中には月経不順、無月経の者が含まれていることが推測される。
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