研究概要 |
「重さ」の知覚に対する「素材」の影響を解明する目的で異なる物質における「重さの弁別」テストを行った。密度の異なる3種類の素材(Plastic(P),Aluminum(A),Copper(C))を用い、均一で質量の異なる(5〜100g)立方体をそれぞれ10種類作製した。健常な成人15名(18〜20歳)が「同質弁別テスト:同じ素材での2物体間の重さ弁別」に参加した。被験者は参考刺激を2回繰り返して持ち上げた後比較刺激を1回持ち上げ、参考刺激に比べて「重いか、軽いか、同じか」を評価した。スクリーンによって被検者は直接物体を見ることはできなかった。実験者が参考刺激と比較刺激の受け渡しを速やかに行った。質量差が5〜25gになるよう10種類の立方体から2つの物体の組合せが数種類選ばれ「重い方から軽い(重-軽)」、「軽い方から重い(軽-重)」場合の2種類の「提示順」で偽似ランダムに提示された。さらに17試技は同じ質量の組合せを混ぜた。組合せの種類及び繰り返し回数はどの素材でも一定だった。素材の提示順は被検者に対してカウンターバランスされた。各素材でそれぞれ177試技の弁別が行われた。各条件に対する弁別の正答数が求められた。正答数の平均値は、「軽-重」で66.53(C),61.73(A),59.93(P),「重-軽」で50.07(C),51.27(A),46.07(P)であった。分散分析からは「素材」および「提示順」の主効果が見られた(P=0.0168,P=0.0002)。いずれの素材においても「軽-重」の方が「重-軽」よりも成績が有意に優れていた。また2物体の質量差が同じであっても、参考刺激が重たくなるほど成績が有意に悪くなった。これらの結果はWeber's Lawや後効果などが原因していると考えられた。素材の影響はA-C間およびP-C間で有意(P=0.016,P=0.0032)でありCの方がAやPよりも弁別の成績がよくなった。以上の結果は「重さ」知覚に「素材」が何らかの影響を及ぼしていることを示唆していた。
|