研究概要 |
物体の「重さ」の認知における情報処理機構を解明する目的で、2つの異なる観点から重さの弁別実験を行った。10種類の異なる重量(5、10、15、20、25、30、40、50、75、100g)の立方体をそれぞれ3種類の異なる密度を持つ素材(アクリル(1.18g/cm^3)、アルミニウム(2.69g/cm^3)、銅(8.93g/cm^3))で作成した。密度以外の素材の影響を避けるため、すべての立方体に同質のWall paperが皺なく貼付され、また、視覚からの情報をさけるため、すべての実験は被験者に立方体が見えない実験環境で行われた。密度の異なる3つの素材を用いて、一定素材内の重量弁別(平成11年度)および異質素材間(平成12年度)の重量弁別を行い、そのときの正答率から,重さ知覚における情報処理機構を検討することにした。両年の結果を要約すると以下のとおりである。 1)上・下弁別および素材差の各要因には、それぞれ有意な主効果がみられたが、両要因間の交互作用効果は有意ではなく、それぞれ独立して重量弁別に影響を及ぼしていた。しかし、素材の影響は、実験統制から、素材そのものではなく密度あるいは重量-大きさ関係で生ずる何らかの感覚情報によるものと推察された。 2)異質弁別において、密度が小(第1刺激)から大(第2刺激)では、上弁別の成績を、また、下弁別では、大から小の関係があるときは、密度が一定の場合よりも、より重さ知覚を敏感にさせた。 3)重量弁別の情報処理には個人差がみられ、重量-大きさ情報を利用する被験者と重量のみを利用する被験者がみられた。
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