本研究の目的は、1970年代以降における日本の小売構造の地域的差異が、いかに変化したのかを明らかにすることであった。本年度では、その諸段階の試みとして、北海道と近畿地方を事例とした。上記2地域に関して、商業統計、事業所統計、国勢調査のCD-Rを購入して、市町村レベル分析を行った。次に、実態調査に関しては、北海道の函館市、釧路市を選定して、フィールド調査を実施した。北海道全体と函館市・釧路市の分析は現在行っている最中である。近畿地方における結果は、以下にまとめられる。 近畿地方に関しては、市町村を分析単位として、1979年から1997年における小売業の分布パターンの変化を考察した。ジニ係数と市町村人口規模の分析から、市町村間格差は店舗数に関して拡大傾向にあることがわかった。売場面積は人口1万人以上規模の地区で充実し、大都市を除く中規模都市以上で規模拡大が顕著に進んだ。すなわち、店舗数が全体的に減少する中で、人口が増加する大都市郊外中規模都市における小売業の規模が拡大した。そのため、それらの地区で、店舗密度は低いままであったがが、人口当たりの店舗面積は高まった。一方、人口1万人未満の地区では、人口が減少しつつある中で、店舗数も減少した。これらの地区でも大型店は進出したが、売場面積のシェアは低下し、その結果、店舗規模は拡大しなかった。これらの人口規模の地区では大型店が立地したのは一部のみであり、ほとんどは規模拡大をともなわないまま店舗数が減少したのである。小売構造指標に関してクラスター分析を施し、市町村を類型化した結果、どの年代でも中心性の平均値が高い類型ほど、店舗密度、面積密度、織物・衣服・身の回り品割合が高く、飲食料品割合が低い傾向にあった。すなわち、近畿地方において、基本的な市町村間の相対的関係は変化していない。
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