研究概要 |
本研究の目的は,1970年代以降における日本の小売構造の地域的差異が,いかに変化したのかを明らかにすることである。本研究では,以下の2段階の手順で分析を行った。第1に,日本全体における,大型店の立地動向と小売構造を構成する指標群との変化との関係を検討し,小売構造の変化の傾向を検討した。第2に,大都市圏における大型店の展開と小売構造の変化を考察するために,近畿地方を事例として分析を行った。 日本の小売構造の地域別動向をみるするため,3大都市,大都市圏郊外,地方大都市,その他地方に区分して,それぞれの小売構造変数の変化を検討した。その結果,大都市圏で企業化と大規模化が最も進展しており,その逆に過多性の特徴は最も低い,逆に地方では生業的で零細規模商店の比率が最も高く,過多性の特徴が強い傾向は,1979年から1997年まで変わらなかった。さらに,地方では人口が減少しているので人口あたりの販売額の伸びは大きいが,それ以外の店舗規模の伸びと,人口に対する商店数の減少の度合が最も低く,この期間に大都市圏と地方とで小売構造格差が拡大した。 近畿地方では,全国的に小売業店舗数が増加していた1979〜82年において、既に大都市圏のインナーシティの一部と、非大都市圏の町村部で店舗数が減少していた。これらの店舗数減少は需要である人口の減少に呼応するものと考えられる。1982年以降になると、近畿圏全域で店舗数が減少するが、特に大都市圏郊外の比較的人口規模が大きい市部で減少幅が大きかった。これらの地区では、1997年現在著しく低い店舗密度を示す。一方、非大都市圏の町村部では、店舗数の減少幅が都市部ほど大きくない。そのため、現在でも高い店舗密度を示す。しかし、大都市圏縁辺部から非大都市圏にかけて分布する町村のうち、1997年に大都市圏郊外都市に匹敵するほど低い店舗密度を示す地区もあった。これら大都市圏郊外都市と、非大都市圏町村部が、本研究で最も特異な特徴を示す地区群として注目できる。
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