ため池の保全には改修事業の実施とともに、日常的な維持管理が重要である。特に、都市化地域ではため池の改廃が進み、維持管理が粗放化して、防災上の危険性が高まったり、環境上の問題を引き起こしている。そこで、ため池の維持管理上、問題が多い都市化地域の中から、静岡市・清水市と神戸市を事例として調査・研究を行った。その結果、全国でも有数のため池密集地帯にあり、都市化が進行する神戸市では、水管理組織としての農業共同体が崩壊して、ため池の維持管理が粗放化していることを検証し、都市化地域である上に水害常習河川流域にある静岡市・清水市では、地元費用負担のない治水事業の一環としてのため池改修事業と維持管理組織の確保およびそれに関わる行政の役割分担によって、治水を主目的としたため池の転用が実現したことを明らかにした。したがって、都市化地域のため池の保全には、行政と農業者および非農業者から成る地域住民との連携による新しいコンセプトに基づいた保全策が必要といえる。 次に、全国において第二次大戦直後から現在までの、農林省と農林水産省のため池台帳を都道府県レベルで分析した。その結果、ため池の分布の特色は戦前と変化なく、現在に至るまで瀬戸内や近畿地方を中心に分布している、そして、ため池の総数は年々減少し、特に1970年代以降の減少が大きいことと、小規模なため池の改廃が著しいのに対して、大規模なため池はわずかながら増加傾向にあることを指摘できた。
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