国の作成した3つの時期のため池台帳を詳細に分析し、第2次大戦後のため池の存在形態の変化を都道府県単位で明らかにした。具体的には第2次大戦後に全国のため池は小規摸ため池を中心として大幅に減少したが、大規模なため池はむしろ戦後に増加したことである。続いて、全国で最多のため池を有する兵庫県における1960年代初期から現在に至るため池の改廃状況を分析して、ため池の改廃は都市化の進行が著しい瀬戸内沿岸地域で顕著であることを明らかにした。 すべての学問分野におけるため池に関する既往の研究を整理して、それらの成果と課題を明らかにする中で、本研究の意義を示した。 ため池の保全には維持・管理が最も重要であり、その中心となる農業者の集団である村落共同体が弱体化して、ため池の維持・管理が粗放化していることを神戸市における実態分析の結果から明らかにした。そして、大阪府を例に、都市化地域における新しいため池の維持・管理方式の実態分析を行い、その方式の評価点と問題点を明らかにした。 ため池の農業用水供給以外の多面的機能を整序し、多面的機能を活用したため池の保全策は現代においてきわめて有効であることを静岡県や愛知県の事例を通して明らかにした。そして、今後のため池の保全にはため池の持つ環境保全機能を活用した、農業者、住民、行政の連携による維持・管理が重要であることを指摘した。
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