南アジアは、宗教的な違いはあれ、いずれも男性優位社会の特徴を濃く残している世界である。近年の家畜飼育の発展、特にミルクの生産と山羊飼育には目を見張るものがある。本研究では、インドの農村女性と発展する家畜経済との関係を中心にしながら、バングラデシュやパキスタンをも視野に入れた研究をおこなった。 1年目の研究は、「インド・グジャラート州の女性酪農組合の展開-アムダーヴァード県ドゥーマリ村の女性酪農協同組合の分析-」(福岡教育大学紀要第50号第2分冊、pp.47-68)に集約される。そこでは。インドの女性酪農協同組合の設立経緯を、第一期:アムール酪農と女性組合員(独立時から1970年代)、第二期:NGOの組織化による女性酪農協同組合(1970年代後半から1980年代)と第三期:中央政府のSTEPプロジェクトによる女性酪農協同組合の激増(1990年代以降)に分け、特に第二期でのインド最大のNGOであるセワ(自営女性労働者協会)の指導で設立されたドゥーマリ女性酪農協同組合を取り上げ女性労働とミルク経済との視点から整理・まとめた。 2年目は、ヤギ飼育に関して資料調査を行い、「ヤギは砂漠化の犯人か-ヤギ飼育と農村繁栄-」(文部省科学研究費・特定研究(A)研究成果報告書、印刷中)を研究成果の一つとした。「ヤギ悪玉説」が結局は1992年のニューデリーが承認されたことを中心に議論した。
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