(1)機能集積のあり方を旧来の都心であるCBDと郊外に形成された新都心について、アメリカのアトランタを事例に考察し、CBDが機能分化したいくつかの地区群の構成となった経緯、郊外都心が業務集積を進める状況が明らかとなった。(2)GISデータの整備状況と利用方法について検討し、GISによる小地区単位の機能集積の検討を日米大都市圏について行った。具体的にはArcViewで国勢調査や事業所統計の小地域集計の検討を行うとともに、アトランタのセンサス・トラクト単位の従業者データを時系列的に整備し考察を行った。さらに小地域データの統合処理などに関する問題点も明らかとなっため、商業統計メッシュデータなどについてもGIS分析への統合をはかった。(3)三大都市圏の通勤流動時系列データはMapInfo上でのGIS化を完成し、中心都市通勤と都心通勤、自市区内従業と郊外間流動について分析した。その結果、単純に郊外から中心都市への通勤流動が都市化とともに増加してきたのではなく、時期や位置、地域特性により、中心都市通勤率の増加や減少、自市区従業の減少やその後の増加が見られ、また特に郊外間流動のほぼ一貫した増加が注目される点として明らかとなった。(4)企業立地と技術的な企業間関係に関して、特許データのGIS(MapInfo)による分析を行い、大阪府の郊外に立地する中小製造業がどのような企業間ネットワークによりイノベーションを創出しているかを分析した。その結果、郊外の企業間結合からの創出が確認された。こうした結合は、特に小企業や若い企業で重要なものであった。(5)本研究助成によりGISの基盤整備は完了し、上記のように各種データの活用から分析が展開しつつある。ただし小地域データに関しては、本研究の期間においてはGIS関連データの整備が急激な展開を示し、また統合上の問題点も見られたため、予定に入れた研究分析を十分深めることができなかった。集積タイプの分類や郊外集積の要因についてのミクロな検討など、GISの基礎的な整備なしには展開できない研究は、今後の課題としたい。また今後、通勤流動の考察と機能集積の分析の連携を深めることにより、郊外における機能集積と生活空間の関連が全体として明らかにされよう。
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