本研究は、地理学の思潮が、現代の社会環境に対応した教育研究体制の改変によって、いかなる変質を受けているのかを明らかにしようとした二年計画の研究の二年目にあたる。2000年度の研究計画の中心は、1999年度に行った地理学教育機関としての諸大学のカリキュラムの改変および卒業生の就職・進学状況や研究・教育体制に関する現地調査と郵送によるアンケート調査のまとめと論文執筆および発表である。アンケートの回収率は85学科のうち66%であった。その結果、出生率の減少と進学率の頭打ちにともなって教員需要が極端に低下し、旧師範学校系の教育学部の85%以上を示していた教職就職率はここ10年で1/3以下となり、一部の大学は大学の目的を教員養成から教養教育に切り替えている。それにともなって大学のカリキュラムも環境・地域・情報の三つのキーワードを用いた、教職外への就職を念頭に置いた科目の設定へと変化しつつある。また中等教育における地誌教育から地誌の調べ方教育への変化が大学における地誌研究に影響を及ぼしていることも指摘出来た。 研究の成果は2000年8月にソウルで開催された国際地理学連合の第29回国際地理学会議の地理教育分科会で発表し、その日本語版の要約的論文は、「歴史と地理」2001年4月号に掲載が決定しており、英文の原論文は、目下地理学評論の欧文誌版に投稿するために準備中である。
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