本研究は、世界各地のチャイナタウンの地域的性格を解明し、それらの要因について考察し、世界のチャイナタウンの類型化を試みることを目的としている。 本年度は、研究の初年度であり、まず、日本、南北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニアなど世界各地のチャイナタウン、華人社会に関する文献資料の収集に重点を置いた。これらのデータの整理は、本研究費で購入したパソコンでおこなった。 文献資の整理の結果、近年におけるグローバルスケールでの華人移民の増加は、旧来のチャイナタウンの拡大、新しいタイプの郊外型チャイナタウンの形成に大きな影響をもたらしたことが明らかになった。 これらの点は、本科研費によってオーストラリアで実施したフィールドワークでも立証された。メルボルンとシドニーのチャイナタウンについての調査、資料収集をおこなった結果、都心近くに形成された旧来のチャイナタウンが、観光地としての整備が進められる一方で、中国大陸や東南アジア出身の新来の華人移民は、郊外に新たなチャイナタウンを形成した。また、富裕層からなる香港系華人は、中・高級住宅地に居住する傾向が認められた。 ここでみられた3つの類型は、欧米でも類似したパターンが見いだされる。今後、世界各地のチャイナタウンの地域性、普遍的性格を整理・分析し、世界のチャイナタウンの類型化を試みていく予定である。
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