今年度は、環境保全型農業を実践する農家やグループを、インターネットで検索し、この定着と発展の度合いなどを確認した。また、実践農家やグループ、あるいはこの農業が立地する農業・農村地域を訪問し、農業形態の種類、定着と発展の要因を検討するとともに、この農業を実質的に担保する認証制度の内容と基準を確認するため行政組織を訪問した。インターネットの[goo」で「環境保全型農業」をキーワードに検索すると、1990年代前半に公的機関が調査した実践農家やグループ数との比較では、内容を度外視して数だけ見れば、約2倍近くも増加し、この農業は大きな流れになりつつある。実践農家やグループではこの農業の手探りの状態から、食品の安全性、健康嗜好、環境問題の認識の高まりを背景とする国民的コンセンサスができつつある現状の中で、生産技術の底上げや生産性の安定に自信を深め、農業経営の中心に据えている。先進地域のカリフォルニア州では、認証制度の明確化で持続的農業(環境保全型農業)の発展を実質的に担保しているが、認証団体の一つである「CCOF」の実績では、近年認証を受ける農家や面積、農畜産物の種類のいずれも増加している。さらに農業・農村コミュニティの健全化に努力する家族農業経営の安定化策として導入されたこの農業は、中規模な農業経営者にも導入されるなど、環境問題に厳しい姿勢を見せる州政府の政策と相俟って、州農業を性格づける太い潮流になりつつある(この研究は現在投稿中である)。この認証制度は2000年の4月からわが国でもスタートするが、それに先立って各自治体でも独自の基準を認定して実施しており、この農業を実質的に担保しつつある。いずれにしても、1999年7月に成案化された「食料・農業・農村基本法」のように、わが国における農業・農村地域の持続的発展は国民的課題であるが、この一手段として環境保全型農業は重要であり、今後の動向が注目される。
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