今年度も、環境保全型農業を実践する農業・農村地域を訪問し、実践農家やグループの代表者に、この農業を導入した動機、農業の形態、農産物の種類、出荷の形態などについて、インタビューする中から、この定着と発展の諸要因を考えてみた。先進地域のカリフォルニア州では、サクラメントバレーに位置するヨーローカウンティの2〜3の実践農家を訪問した。これらの農家はいずれも州の認証団体の一つである「CCOF」の認証を受けている。ウオルナッツやペスタチオのナッツ類を生産する実践農家の動機については、州の自然環境から厳しい認証基準をクリアするためには、ナッツ類が比較的生産し易いことを上げているが、同時に、単位当たり生産量が低下しないこと、出荷価格が高いことなども指摘している。もちろん、農薬や化学肥料を使用してきた近代的農業に対する反省が根底にあることはインタビューから感じ取ることが出来た。わが国では、改めて宮崎県綾町を訪問し、詳細な調査を実施した。この調査については、現在学会で報告するため準備しているが、綾町におけるこの農業の導入動機については、町の活性化の基礎に自然・自然環境を保護・保全するという姿勢から派生していることが理解できた。この考えを、町が従来から実践してきた自治公民館運動によって浸透させながら、この農業もその一貫であるという視点に基づいて実践し、定着させてきた。吉備高原の中山間地域に位置する岡山県賀陽町では、地域農業の活性化を目指し、主婦グループを中心にこの農業を導入・定着させてきたが、現在、具体化した認証制度をどのようにクリアするかが大きな課題となっている。この他、さらにこの農業を実践する2〜3の農業・農村地域を訪問したが、今、直面している大きな課題は、2001年4月から適用されるわが国の認証制度をどのようにクリアするかであった。この課題に対する今後の動向が注目される。
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