研究課題に基づく研究期間の3年間を1年間延長して調査を行ったが、この結果、国内外でさらに数例の実証研究を蓄積することができた。これまでも環境保全型農業の重要性は理解されていたが、昨今の食や食料の安全性を根底から揺るがす一連の事件や問題に、国民が敏感に反応しているところから考慮すると、この農業の発展は揺るぎないものになりつつある。それはこの農業を実践する農家やグループが着実に増加していることからも判断は可能である。事例研究でも指摘したが、この増加は、個人やグループの農業経営の建て直しという側面を持っていたとしても、また、点としての「狭い考え方」であっても、まずは出発点として一定の評価を与えなければならない。なぜならば、研究課題とした農業・農村地域の持続的発展には、この農業の蓄積と発展がキイーとなっているが、この過渡期段階を十分に経ることがなければ、面としての「広い考え方」にまでは到達しないからである。「広い考え方」の調査事例はこのことを指摘している。もちろん、21世紀を「環境の世紀」と位置づけるならば、農業・農村地域は言うに及ばず、都市や都市化地域の持続的発展にも、この農業は環境政策の一面としても有効であると指摘できる。この農業を「点と面」、「狭い考え方と広い考え方」、「量と質」を段階的・重層的に統合する中で、農業・農村地域の多面的機能は生かされることになり、ひいてはこの地域の持続的発展に寄与することできると判断した。この視点を担保すれば、研究課題の主旨に接近が可能であり、環境の世紀にふさわしい地域杜会が実現できると確信している。
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