研究概要 |
ヨーロッパ・アルプス内五地域の実態調査の結果,計画的・政策的に,美しい牧歌的な景観が維持されている観光地には、多くの観光客が訪れ,農家民宿を含めて、観光業(とりわけグリーン・ツーリズム)が盛んになり、地域住民の兼業収入が生ずるとともに、住民に対する誇りが芽生え、さらには後継者が増加し、持続可能な地域発展がもたらされるという形で、観光業と農業の共生システムが形成されていることが明らかとなった。このシステムは,地域的条件に配慮すれば、日本の中山間地域にも適用可能なモデルとなり得るものである。 このシステムにおいては、牧歌的な景観がどういう計画・政策によって維持されているかが重要であるので、この点を各地域の実態調査で掘下げた。その結果、フランス・アルプスのヴァルモレルでは、観光業に課税して基金をつくり、それを牧草地の整備に投下するという形のユニークな地域開発計画契約の締結(コミューンが連合した地方分権化方式)によって、スイス・アルプスのシャトーデでは、ユネスコの「人間と生物圏」実験地域に指定されていることもあって、スイス連邦政府の強力な助成策(草地の生態系への配慮がなされている)によって、ドイツ・アルプスのヒンデランクやオーストリア・アルプスのヒィルゲンでは、EUの直接所得補償政策などのよって,牧歌的な景観が維持されていることが明らかとなった。
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